Kaigi on Rails 2023を開催した

はじめに

いつものように、Kaigi on Railsの振り返りを年末に書くことになってしまいました。皆さん良いお年を。

というわけで

Kaigi on Rails 2023が開催されました。この記事では開催にまつわるあれやこれやを書きたいと思います。

準備の話

会場の選定

2020年にKaigi on Railsを初開催して以降、2022年までオンライン開催だったので会場について気にする必要は(良くも悪くも)ありませんでした。しかし2022年初頭の時点で「来年は物理開催ができそう」という予測があり、初めて浅草橋ヒューリックホールの下見に行ったのは2022年4月でした。かなり良い会場だったため、他の会場には特に下見に行っておらず、ほぼ即決に近い状況でした。 ポイントは駅から近いこと、人数が400人ほどとちょうどよい大きさであること、2トラックできること、ブースがそこそこ置けること、配信を手伝ってもらえることなどでした。これら全ての条件を持っている会場は意外なほど少なく、結果的にほぼ即決になったわけです。 会場は1年前からしか本予約ができなかったため、いったん仮押さえをしてもらって2022年はその年の開催に集中することとなりました。去年の感想記事

オンラインでのやり残しがないようにする

とあるのですが、まさにその勢いで過ごしていたため、2023年の準備を本格的に始めるのは2022年10月以降となりました。

2023年に入って以降の準備

初めての物理開催ということでどういうことが起こるがあまり予想が付かなかったため、以前よりもスケジュールを気にしながらの準備となりました。特に2022年との差分であるスポンサーブース(物理)や会場で必要な諸々のサイン(受付はこちら的なやつ)については2023年に入った時点で意識に入れつつ準備を進めていきました。 例年通りに基調講演について早めに固めつつ、スポンサー募集とCFP公開を順次進め、プロポーザルを選定するところまではこれまでとあまり変わらずにできたのですが、9月頃から会場とのやり取りの回数が増え、スポンサーさんとのやり取りも例年以上に頻繁になってきました。 最終的にはチームメンバーが多くの部分を拾ってくれたため、なんとか当日に間に合ったという感じです。感謝。

当日

ブース

物理ブースの存在は2023年における最大の変化かもしれません。これまでも2021年と2022年にオンラインブースはあったのですが、人の流れと会話の量という点で物理ブースには勝てないということが明らかになっていました。そこで物理開催における重要ポイントの一つはブースということになります。 ブースの設置数は会場との兼ね合いなのですが、今回の会場のサイズ的に10社くらいが限度そうでした。そのため、厳正なる抽選(Array#sample)を行い、多くのスポンサーさんに対してお断りをしなくてはなりませんでした。誰も得しないのでできればお断りしたくはないのですが、こればかりは大きな会場を確保できない限り起こるような気がします… 当日のブースはとても賑わっていて、物理開催の良さが一つ表れているなと感じました。各社ともかなり力が入っていて(ありがとうございます!)、個人的にも楽しませてもらいました。

懇親会

懇親会も2023年で大きく変わったものの一つです。物理で開催するということはもちろんなのですが、これまでのオンライン懇親会ではすでに仲良くなった人たちしか来ず、新規参入者が少ない、という印象があったため、それを変えたいと思いました。 そのため、懇親会のチケットを別売りにすることはせず、本編のチケットにバンドルすることにしました。さらに懇親会の会場を本編と同じ場所にすることにより、できるだけ離脱を減らすようにしました。 その結果、目測ではありますが本編参加者の8割近い数の参加者がありました。多くの方に楽しんでいただけてよかったと思いますし、今後もこの形式でやっていくのが良いという手応えもありました。

フリースペースやハックスペースなど

今回は物理開催ならではということと、会場にちょうどいい大きさの部屋が複数あったということで、今回は各部屋を様々に活用してみました。 まずはサテライト会場です。これはROOM Bが少々手狭であるということから、大勢の人がROOM Bに来た場合に参加者がROOM Bの動画を見れる部屋を別に用意するというものです。一定の需要があったらしく、常に参加者がいる状態だったようです。 ハックスペースもありました。フリースペースとは違ってこちらの部屋には電源があったのですが、あまり積極的に周知しなかったこともあってそれほど利用されていなかったようです。これは課題といえば課題なのですが、そもそも次回の会場に電源を供給できる部屋があるのかもわからないのでなんとも言えません。 そしてフリースペースです。この部屋はかなり広く座席数も多い部屋なのですが、積極的に活用するというよりはむしろ解放しておいて自由に使ってもらうようにしました。机と椅子に関しては会議室的な正面向きの配置ではなく、互いに向き合うように配置して会話しやすいようにしました。これは前日準備で運営メンバーから出てきたアイデアで、実際やってみると非常にうまくいきました。「廊下」的な機能性なのですが、物理的な廊下が狭い会場では廊下部屋を作るのが有効であるという知見を得ました。来年以降も実装を検討したいですね。 フリースペースには水道などの設備があったため、なんとねこのやのogijunさんをお呼びしてコーヒーを淹れていただきました。ogijunさんはKaigi on Railsの名付け親ということもあり、また私がコーヒー好きのため、個人的にもぜひやりたいということで実施の運びとなりました。こちらは満員と行列を避けるために意図的に周知していなかったのですが、それでもかなりの杯数が出たようです。やはりカンファレンス会場で飲む深煎りコーヒーはいいですよね… コーヒーについては元々RubyKaigi 2019で同様のことが行われていた(ただし部屋の外で提供して部屋の中で飲むスタイルだった)のですが、その時と比べると部屋の中でコーヒーを提供する関係でogijunさん周辺に人だかりが出来ていたのが今回の変化でしょうか。もくもくとコーヒーを淹れるというよりはにぎやかな感じで楽しそうでした。島田浩二さんがコーヒースタッフ業(?)をやってらっしゃったのが印象的です。

コンテンツ

今年は初めての2トラックということでした。初めましての登壇者あり、久しぶりの登壇者あり、3人での登壇あり、3年連続の登壇者ありとバラエティに富んだ方々によるトークの総数は基調講演を含め36と過去最多となりました。どのトークも興味深かったのですが、分身の術を得ていないため全て見ることはできませんでした。先日YouTubeに動画が全て公開されましたので、今順次見ているところです。ここでは基調講演の個人的な感想を書きたいと思います。

zzak

zzakは実は日本語で基調講演をしてくれるのでは、と期待していた部分もあるのですが、最終的には英語でのトークとなりました。といっても内容が日本語でスライドに書き込まれていたため、内容を理解するのに支障はなかったと思います。 zzakは昔から活動している人ですが、まとまったストーリーを聞くのは初めてだったのでなるほどと思いながら聞いていました。しばらく触っていなかったRailsをまた触るにあたってissueを全部読むなど、Railsにかける想いが伝わってくる話でした。将来への展望も聞けたので今後も楽しみですね。

byroot

byrootは遠方に住んでいるため動画でトークとなりました。RubyKaigiの会場で直接会って打ち合わせをして最終的に承諾をもらったのですが、実はbyrootは過去の登壇がほとんどなく(探しても見つからない)、非常に貴重なトークになりました。 内容は過去のバグ修正についてですが、特に2つ目のバグはActive Recordのdupの挙動とMarshalの挙動とObject Shapeのobject too complexの挙動とが全て合わさって起こるバグであり、説明を一度聞いただけでは理解できないようなバグでした。byrootはRailsコアチームのメンバーでありかつRubyコミッターでもあり、またObject Shapeの開発にも関わっていたということでバグを直すことができたとのことですが、さすがと言うしかない。

データで見れないKaigi on Rails 2023

見出しは出オチですが、実際、物理開催では例えば参加者の性別のようなデータを正確に取ることは困難です。アンケートに記入する欄はあるのですが、アンケートの回答率はそこまで高くはないので(回答してくださった方ありがとうございます!)、やはり全体像をつかむまではできません。 それでも語れるいくつかのデータとして、例えば実参加人数を見てみましょう。約380人の会場参加登録がありましたが、チェックインは約370人となっています。つまり10人くらいの人は参加費を払ってはいるが実際には来なかったということになります。全体から見ると3%ほどということになりますね。これはいわゆるオーバーブッキングを行っても問題が起こらない可能性を示唆しています。15000円の参加費でもこれくらいの人数が来ないのであれば、もっと安ければさらに来ない人は増えるでしょうから、キャパに対して5%ほど上乗せした人数を入れることは可能そうです。 YouTubeでの視聴に関してはしっかりとしたデータが取れています。それによると、Day2のROOM Aはユニークな視聴者が約600人います。これは興味深いことにオンライン視聴チケットの数を超えています。おそらくTLなどから流入した方がいるのでしょう。平均視聴時間は約20分と非常に短く、見たいトークを1つだけ見るという使い方になっていると思われます。 こうしてみると、カンファレンス参加の形というのは非常に多様なのだなと感じます。物理参加の人たちは2日間ずっと会場の近くにいて人と話したりトークを聞いたりする一方、1つのトークを動画で見るだけの人もかなりの数いるということです。Kaigi on Railsはカンファレンスの敷居を下げることを当初より意図して設計されており、今回の結果もまたその方向性を後押しするものとなるでしょう。

さいごに

さて、ここまで2023年のKaigi on Railsについて書いてきました。2024年についての情報はもう少しお待ちいただくとして、最後に告知があります。 2024年2月15日16日にベルサール羽田空港で開催されるDevelopers Summit 2024にて、オフラインカンファレンス復活!イベント現地参加の魅力を語りつくすリレーセッションに登壇することになりました。私はKaigi on Railsからの参加ということで、「初学者から上級者まで」という部分にフォーカスしたトークをする予定です。現地でお会いできることを楽しみにしています!

おまけ

画像を置いておきますね。

Kaigi on Rails 2023のYouTube用画像です